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会社経営(株式会社クアンド 代表取締役CEO)下岡 純一郎 さん

会社経営(株式会社クアンド 代表取締役CEO) 下岡 純一郎 さん

北九州市八幡東区で建設業を営む家庭の長男として生まれた下岡さん。幼い頃から父親の近くで商売を見ていたと言います。大学院卒業後、民間企業に就職したのち、海外でのグローバルプロジェクトにも参加しました。その後、Uターンし起業、今に至るまで、多くの経験を重ねてきた下岡さんに、今の北九州市はどう映っているのかを伺いました。

重ねた経験とまちの絆を追い風に、産業のアップデートに挑む。

ー北九州市八幡東区で生まれた下岡さんですが、どんな子ども時代を過ごしましたか?

八幡東区は、日本の近代産業の礎をつくった八幡製鐵所の操業の地です。製鐵所を中心にまちが賑わい、製鐵所で始まった『起業祭』というお祭りを毎年楽しみにしていたのを覚えています。私の父親はこのまちで建設関係の事業をしていて、商売の基本的な考えやお金を稼ぐことのおもしろさを教え込まれていました。私自身は高校卒業まで北九州市八幡東区で過ごし、大学進学で福岡市内へ、大学院進学で京都へ移り住みました。

ーその後、東京やイタリアで生活していたそうですね。

就職を機に地元を離れました。就職先は、外資系消費財メーカーだったので、2年目にはイタリアで製造ラインの立ち上げに携わりました。ともに働くのは世界中から集まった人々。メンバーとグローバルプロジェクトを進めるなかで、日本人のモノづくりに対する丁寧さや品質へのこだわりなど、現場での実力がとても高いということを実感しました。

ーUターンはいつから考えていたんですか?

大学時代にシリコンバレーに研修で行ったのですが、そこで起業やスタートアップっていいな、と感じた経験があって。家業を継ぐかどうかは別にして、漠然といずれは九州で起業をしたいと考えていました。

ー北九州市で起業した会社について教えてください。

『株式会社クアンド』は、産業のいい時代も斜陽の時代も経験したこのまちで、未来を見据えて「産業をアップデートする」というミッションを掲げています。現在は、『SynQ Remote(シンクリモート)』というプロダクトを開発し運営していますが、立ち上げから3年間くらいは、地元企業の受託開発やコンサルタントをしていました。東京、海外時代は数字やデータを見ながらビジネスライクに仕事を進めてきました。しかし、こっちは、もっと人と人のつながりや、それによって生まれる信頼関係を大事にするんです。最初は、戸惑いもありましたが、そこがこのまちのいいところでもあるんですよね。一度、信頼関係を築くと、とことん応援してくれる。地元愛や絆を感じることができました。

ーシンクリモートについても教えてください。

シンクリモートは、製造業、建設業などに特化した遠隔支援コミュニケーションツールです。製造や建設の現場では、技術を持った現場監督が時間や場所に拘束されているので、経験の少ない作業者へ技術を伝える制限がありますよね。しかし、例えばデザインやWEB開発の世界では、Slack、Zoomなどでつなぎながら遠く離れたベテランから教えを受けながら仕事ができている。これを、現場へ応用させるアイデアでできたのがシンクリモートです。今は、日本だけでなく世界の現場でも使われています。

ーその事業を北九州市で行う理由は?

最初に話したように、ここはモノづくり、鉄のまちです。現場の技術力や経験が豊富な人がいるんです。シンクリモートは、時間、空間、言語から現場を開放するので、例えば日本からアメリカの建築現場を管理してもいいし、北九州からアジアに新しくできる火力発電所の現場を管理できるんです。現場力を世界へ輸出する。それは地域の新しい産業になりますよね。
また、北九州市はスタートアップへの支援も手厚いんです。弊社もこれまでに『IOTメーカーズ』『GAP-K』『事業化支援事業』などの支援を受けてきました。開発費に膨大なお金がかかるなかで、この支援はとても助かりました。
プライベートでは、二児の父親でもあります。近くに博物館や公園なども多く、北九州には子育てしやすい環境が整っていると思います。

ー今後の目標はありますか?

スタートアップ企業として、上場というひとつのマイルストーンに向かって進んでいます。北九州には日本を代表する企業があります。次は弊社が日本中へ、そして世界へ事業を大きく展開していきたいと考えています。

ーこれから北九州市で新しいことをはじめようと考える人にメッセージをお願いします。

官営八幡製鐵所の歴史があるからなのか、行政と民間が協力して産業を引っ張ってつくっていこうとする気概を感じます。そんなまちを舞台にビジネスを展開できるのは心強くもあり、可能性を感じますよね。さらに、地元愛に溢れる先輩経営者たちの熱烈な応援も待っています。北九州で、スタートアップの仲間たちが増えることを願っています。

会社経営(株式会社クアンド 代表取締役CEO)

下岡 純一郎

北九州市八幡東区生まれ。小中高時代はバスケットボールに打ち込み、大学進学を機に福岡市内へ。大学院進学では京都、就職では関西へと移り住み、社会人2年目のときにイタリアへ赴任。グローバルプロジェクトで経験を積み、帰国。その後、北九州市で『株式会社クアンド』を起業した。自社開発の『SynQ Remote(https://www.synq-platform.com/)』は、日本、そして世界の製造現場、建設現場で活用されている。