Relay Message
北九州市を舞台に自分らしく活躍する人たちの声を、リレー形式でお伝えします。その想いや描く未来予想図は人それぞれ。10人いれば10通りのアンサーがあります。その多様さは、北九州市だからこそ。彼らのリアルな声をキャッチしてください。
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「ハインツテック株式会社」青木 睦子さん
リレーメッセージの6人目は、若松区に本社を置くディープテック領域の大学発スタートアップ企業 ハインツテック株式会社 代表取締役社長の青木睦子さんです。2021年7月に北九州学術研究都市に同社を設立した青木さんに北九州市はどのように映っているのか、お話を伺ってまいりました。
北九州市の印象をお聞かせください
出身は東京都です。この話をすると驚かれることが多いのですが、北九州は、以前私が住んでいたアメリカ西海岸の雰囲気によく似ていると感じています。北九州市の、ほどよく都会でほどよく田舎で、人と人とが適切な距離を保てるところが私は気に入っています。
また、北九州市は海や緑が多く、広い公園もたくさんあるので、子育てにも適した環境だと思います。事業を進めていく観点でも、学術研究都市のような場所があり、例えばクリーンルーム(空気清浄度が確保された部屋)のような、多額の初期費用や維持費がかかる設備を自治体が備えているというのは非常に魅力的です。
現在はどのような事業を行っているのでしょうか?
半導体を作るときの微細加工技術を使って小さなストロー状の構造が並んだ膜を作り、それを材料の一部にした「ナノチューブ膜スタンプシステム」というツールを開発しています。これは、バイオロジー(生物学)やライフサイエンス(生命科学)分野の発展に役立つ、細胞への物質導入や抽出に関する新しい技術を実現するためのものです。
また、弊社の技術を活用し、企業や研究者の方々への研究開発支援サービスも提供しています。私たちの技術は医療や環境、食品など広範な分野で活用が可能です。例えば医療であれば、再生医療や細胞治療、ゲノム編集などにより、今まで治らなかった病気が治るようになる、または新しい治療法が見つかる、ということにつながります。
起業のきっかけをお聞かせください
私のキャリアの軸は「技術の事業化」です。会社員時代は社内から新しく出てきた技術を、どのようなプロダクトやサービスの形にどうやって落とし込むか、またそれらを必要とする人はどのような人たちで、その人たちにどのようにそのプロダクトやサービスを届けるかを考え、実行してきました。
現在当社で事業化しようとしている技術に出会ったとき、これは社会にとって非常にインパクトのあるものだと感じ、「私が事業化したい」と考え、起業を決意しました。起業は、私のキャリアの軸である「技術の事業化」を実現するための一つの選択肢であると考えています。
若い人たちに向けてメッセージをお願いします!
若いうちにいろいろなことにチャレンジしてみると、自分の特性が見えてくると思います。チャレンジを続けていくうちに、自分が能力を発揮でき、楽しいと思えることを見つけられるのではないでしょうか。
私は好奇心が旺盛なので、やりたいと思ったことは比較的すぐに実行に移すことが多いです。
実は、起業する少し前に空手を始めました。空手がどんなものかすら分かっていなかったのですが、たまたま子どもが空手を習い始めたのと、当時はコロナ禍だったので運動が必要だと思っていたときに目の前に空手があった、というのが始めた主な理由です。
そこにあるからやってみよう、という動機でもいいと思います。少しでも興味を持ったことを始めることは、後から振り返るとその後の人生に大きな影響を与えることも少なくありません。
さまざまなことに取り組んだ方が、豊かな人生を送れるのではないかと思っています。失敗しても取って食われるわけではないので、やらないよりはやった方がいいですよね。仮に失敗しても、それが自分に合わなかったと分かることなどが財産になると思います。
青木睦子 Mutsuko Aoki
大学院でナノテクノロジーとバイオロジーを学ぶ傍ら、「技術の事業化」に興味を持ち、多数の企業への提言などの活動を行う。修士課程修了後、米国半導体メーカーIntel で新規事業開発、市場開発、営業などを経て渡米。帰国後、米国ソフトウェアメーカーVMware で新規事業のアライアンス、マーケティングなどを担当。2021年7月にハインツテック株式会社を設立。
https://hyntstech.com